【この世をば 】「この世をば」は藤原道長の有名な和歌で、権勢を誇る象徴として解釈される

藤原道長が詠んだ有名な和歌「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思えば」は、道長の権力と栄華を象徴するものとされている。この歌は『小右記』に記載されており、当時は批判されるようなものではなかったが、後の世で道長の傲慢さを示すものとされるようになった。この歌の表現と、同時期の三条院の詠んだ月歌との対比に、政権交代期における二人の心境の差が感じられるという指摘がある。

「この世をば」の歴史的背景

藤原道長が詠んだ「この世をば」の和歌

藤原道長が詠んだ有名な「この世をば我が世とぞ思ふ望月の欠けたることも無しと思へば」という和歌は、寛仁2年(1018年)10月16日の宴で詠まれたものでした。この和歌は、当時の藤原実資の日記「小右記」にのみ記録されており、道長自身の日記である「御堂関白記」には記載されていないことから、道長にとって「この世」なのか「この夜」なのか、あるいは「子の世」なのかは明確ではないとされています。

和歌に込められた道長の思い

道長が詠んだこの和歌は、当時の人々から批判されるようなものではなく、むしろ道長の権力と栄華を象徴するものとして捉えられていました。しかし、後の世では道長の傲慢さを表すものと解釈されるようになりました。一方で、三条天皇の退位を詠んだ「心にもあらでうき世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな」という和歌と対比すると、同じ月を題材としながらも、道長の歌には何とも言えない切ないニュアンスが感じられるのも事実です。

和歌の再解釈と登場人物の思い

近年の解釈では、道長と藤式部の二人だけが知る廃屋での満月を思い出しながら、道長が「この世」ではなく「この夜」を「我が世」と思っていたという新しい解釈も提案されています。このように、同じ和歌にも様々な解釈が生まれ、それぞれの登場人物の複雑な心情が反映されているのが特徴といえます。

大河ドラマ「光る君へ」での描写

「この世をば」のエピソード

大河ドラマ「光る君へ」では、この「この世をば」のエピソードが重要な位置を占めています。ドラマではこの和歌が初めて詠まれる場面が注目されており、視聴者からも熱狂的な反応が寄せられているようです。
引用：x.com
ドラマでは、道長が得意げに歌を詠むものの、周囲の人々の複雑な反応が描かれているようです。特に、道長と対立する三条院の視点から見ると、この歌には深い切なさが感じられるのだとか。

新解釈を踏まえた描写

加えて、ドラマでは道長と藤式部がかつて廃屋で眺めた満月を思い出しながら、「この世」ではなく「この夜」を「我が世」と思っていたという新しい解釈も取り入れられているようです。このように、同じ和歌にも様々な解釈が反映されており、登場人物それぞれの視点から描かれているのが特徴的です。

「この世をば」をめぐる文化的影響

和歌の文化的価値

このように、藤原道長が詠んだ「この世をば」の和歌は、平安時代の文化を象徴する作品として評価されています。当時の人々にとって、和歌は単なる感情表出の手段だけでなく、権力を誇示する重要な手段でもありました。そのため、この歌が大河ドラマで取り上げられることは、日本の文化的遺産を広く一般に紹介する良い機会となっています。

新解釈への注目

近年では、「この世をば」の和歌に新しい解釈が提案されるなど、学術的にも注目を集めています。これまでの「権力者の傲慢さ」という解釈に加え、道長と藤式部という二人の視点から読み解く試みは、平安時代の文化を深く理解する上で重要な示唆を与えてくれます。

大河ドラマでの取り上げ方

大河ドラマ「光る君へ」では、こうした歌の背景や新しい解釈を丁寧に描いていくことで、視聴者の関心を高める狙いがあるようです。実際に、ドラマの放映を前に、「ついにあの和歌が詠まれる！」と多くの視聴者が待ち望んでいる様子が伺えます。このように、「この世をば」の和歌は、今なお平安時代の文化を象徴する存在として、注目を集め続けているのが特徴といえるでしょう。